中間状況

 中間という時期でもないが、月代わりが近いので、ここまでの感想をまとめてみようと思う。現在見ているドラマは、「エンジン」(フジ、月9)、「離婚弁護士II〜ハンサムウーマン〜」(フジ、火9)、「anego〜アネゴ〜」(日テレ、水10)、「アタックNo.1」(テレ朝、木9)「汚れた舌」(TBS、木10)、「タイガー&ドラゴン」(TBS、金10)と、深夜放送の「ホーリーランド」(テレ朝、金)。
 現時点では、「anego」「汚れた舌」が面白い。「エンジン」「タイガー&ドラゴン」はまあまあ。「アタックNo.1」「離婚弁護士II」「ホーリーランド」はイマイチといった感じ。
 以下、ドラマごとに簡単にみていく。一応、好きな作品順。

anego〜アネゴ〜

 素直に楽しめる作品。やはり、篠原涼子はこういう役が似合う。コミカルでテンポも良く、多少考えさせる内容も含んでおり、飽きさせない工夫が凝らされている。黒沢役の赤西仁の演技もなかなかうまい。
 本作の主人公、野田奈央子は、いわゆる負け犬とは多少毛色が違う。というのも、彼女はバリバリのキャリアウーマンというわけではなく、一般の事務職であり、派遣社員と肩を並べている(もちろん、そこに上位下位の関係はあるが)。だが、その一見単調な仕事の中に魅力を感じて、総合職への道も断ってしまう。仕事に打ち込む30代という設定ではあるものの、仕事以上に人間関係を重視して、自分を捨ててまで他人に尽くしてしまうというのがanegoの特徴なのだろう。
 残念に思うのは、冒頭の奈央子の語りの不自然さと、沢木夫妻のうっとうしさである。特に沢木夫妻に関しては、毎回ストーリーに絡めてくる必要があるのだろうか。あの夫婦がもたらす重さは、本作に不可欠なものとは思えない。むしろ、せっかくのリズムを壊しているようにさえ感じられる。コメディーならばコメディーを通すべきで、多少ならまだしも、あまり露骨にシリアス路線を絡めるべきではないと思う。

汚れた舌 amazon.co.jpでチェック

 内館牧子脚本の本作も、負け犬の千夏(飯島直子)が主人公。主要な登場人物すべてが嘘偽りを内包しているというのは圧巻。次から次に騙し騙される展開が続き、目が離せない。だれもが自分の思惑を持って行動するというのは、現実的であるのだが、それを極限まで拡大することで、非現実的な物語へと転換している。だから、いかにも昼ドラ的な愛憎劇でありながら、リアリティが感じられて恐ろしさを増している。
 内館牧子の魅力は、登場人物が生きているところだと思う。月並みに聞こえるが、人物が生かされてしまっている作品は多い。脚本家が描く、エンディングに向かって、登場人物たちが一丸となってストーリーを進めていくドラマなど見たくない。それぞれが、それぞれの意思によって行動した結果が、エンディングでなければ面白くないのだ。その点において、内館作品は優れていると思う。本作においても、ばらばらの考えが絶妙に絡まりあって、軽快に展開している。
 偶然、二人の関係を知ってしまうなど、出来すぎだという批判があるかもしれないが、それはドラマを盛り立てるために必要なのであって、批判すべきではないと思う。このことは、リアリティと相反すると感じるかもしれない。たしかに、不自然すぎては問題だが、リアリティというのは、人物の行動や心情変化によって生まれるもので、それが的確に描けていれば、多少の都合良さが魅力を損ねることはないだろうと思う。

エンジン amazon.co.jpでチェック

 月9でキムタク主演といえば、それだけで見たくなくなる。にもかかわらず、本作が面白いのはなぜだろう。
 どんなドラマにおいてもキムタクは、あくまでキムタクであって、キムタク役を演じている。だから、キムタクのドラマを面白くするには、キムタク的な主人公でなくてはいけない。その点において、本作は見事に成功しているように見える。神埼次郎(木村拓哉)もやはりキムタクで、そこに違和感がないから楽しめるのだろう。
 重くなりがちな養護施設での話を、適度な重さで描いているところも良い。心に残る、深いドラマを求める人もいるが、娯楽である以上は楽しんで見られることも重要だ。だが、今後はシリアスな方向にシフトしていくのかもしれない。それをキムタクが打破できたなら、良いドラマだといえるのではないだろうか。

タイガー&ドラゴン amazon.co.jpでチェック

 クドカン脚本にしては、珍しくつまらない。純喫茶「よしこ」での、取立ての場面など、部分的に笑えるところはあるのだが、全体としては凡作の気配が漂う。
 落語と現実を絡め合わせるところに無理があるのではないか。単発ドラマamazon.co.jpでチェックならまだしも、連ドラとなると、玉石混交になってしまう。がんばってはいると思うのだが、小虎(長瀬智也)の落語が面白くないのだから、どうしょうもない。

アタックNo.1 amazon.co.jpでチェック

 テレ朝ではおなじみとなった、マンガ原作amazon.co.jpでチェックのドラマ化。「動物のお医者さんamazon.co.jpでチェックエースをねらえ!amazon.co.jpでチェックは良かったが、本作はイマイチ。序盤に比べると、持ちなおしてきた感はあるが、それでも評価しがたい。なぜかといわれると説明できないのだが、なぜか楽しめないのだ。
 ところで、スポーツを題材にしたドラマの場合、試合のシーンというのは見ていて面白いのだろうか。もともと、スポーツに興味がない人間としては、作中で試合のシーンを長々とやられると、結果は分かっているのだから、早く話を進めろ!と思ってしまう。適度な量は必要だろうが、うまくまとめて展開させて欲しい。

離婚弁護士II〜ハンサムウーマン〜 amazon.co.jpでチェック

 前作amazon.co.jpでチェックが面白かっただけに、期待をしていたが、全くの期待はずれ。見ていて面白くもないし、微塵のカタルシスも得られない。そればかりか、不快感さえ抱いてしまう。前作を改良したつもりかもしれないが、改悪としか言いようがない。
 ドラマの続編というのは、ある意味では視聴率の保険付のようなものではあるが、実際には、あまり成功しない。全く同じでは飽きがくるし、かといって変にいじると前作のファンを突き放す結果となる。本作の場合、新しく加えられたキャストや要素がことごとく面白くないわけで、これなら飽きるとしても、前作と全く同じの方が良かったと思う。
 特に対立構造の欠陥が致命的だ。前作では間宮貴子(天海祐希)の敵は外部(名前は忘れたが、元属していた法律事務所)にあったが、本作の場合、敵となるはずの佐伯絵里(瀬戸朝香)がなぜか、間宮法律事務所の中に入ってしまっている。結果として、中途半端な対立関係になり、そこから得られる爽快感も失われている。請け負った依頼も消化不良に終わることが多く(理想といえば理想なのだろうが)、煙に巻かれたようで物足りない。ドラマとしては、佐伯のように好戦的な弁護士の話の方が面白いのではないかと思う。

ホーリーランド

 マンガが原作amazon.co.jpでチェックらしい。このドラマを見ていて、何が面白いのか分からないが、こういうマンガが受けるのだろうか。正論を言っているようだが、結局は暴力の応酬でしかないように見えてしまうのは、見方が未熟なのだろうか。