元ジャニーズJr.逮捕に思うこと

事件のあらまし

 少し前の話題で恐縮だが、2005/05/19に元ジャニーズJr.(19)が逮捕された。テレビでの報道は皆無であったと思われるが、新聞やネットで報じられた。とりあえず二つの記事を引用してみる。

 すし店から現金50万円入りの大型金庫を盗んだなどとして、警視庁少年事件課は19日、東京都小平市東村山市の無職の少年2人(いずれも19歳)=別の強盗傷害の非行事実で家裁送致=を窃盗容疑などで再逮捕したと発表した。1人は人気グループ「ジャニーズ・ジュニア」の元メンバーで、テレビドラマにも出演していた。「芸能活動のために遊ぶ時間がなかった。仲間と遊びたかった」などと供述している。少年らは7人の窃盗グループで、ほかにもジャニーズ・ジュニアの元メンバーがいるという。

 ジャニーズ事務所の元レッスン生(19)が、オヤジ狩り、金庫窃盗を繰り返し、強盗致傷、窃盗、建造物侵入の疑いで19日までに逮捕された。警視庁少年事件課などによると、この少年を含む7人の未成年者のグループは昨年1月以降、東京・小平市などを中心に約20件の窃盗を働いていた。被害総額は300万円に上る。同課は余罪を追及している。

 未成年ゆえ、名前を明かすわけにはいかないが、今回逮捕されたのは、M・Sらしい。現在、指名手配中といわれるもう一人は、I・Tとのこと。Mの方は、ドラマ『あきまへんで』にゲスト出演したこともあるようだ。

ジャニーズ事務所錬金術

 鹿砦社などを中心に、ジャニーズの内情暴露や批判の書籍は多数刊行されている。そのなかには、社長であるジャニー喜多川(喜多川擴)の同性愛関係の批判を中心にしたものも多い。たしかに、そこに問題がないとはいえないが、それ以上に問題なのは、ジャニーズ事務所にタレント育成の能力が欠落している点ではないかと思う。ジャニーズ事務所の内情について、全く知らない人間が推測で語るべきではないかもしれないが、ジャニーズは本当にタレントを育成しているのだろうか。
 男性アイドルという市場を開拓したジャニー氏の先見性はほめられるべきである。また、ジャニーズジュニアという、アイドル予備軍とも言うべきグループを組織し、ファンの反応を見たうえで、人気の高いタレントたちを、正式にデビューさせるという方式は、ジャニーズの錬金術の根幹であり、素晴らしいシステムであると思う。男性アイドルに特化し、売れる人材だけをすくい上げ、ジャニーズというブランド力で強力に売り出してゆく。なんてうまいやり方だろうか。
 しかし、それは、経営者側の視点であることを忘れてはいけない。扱う商品がモノであるのならば、それで良い。だが、扱うのは人間である。しかも、その大部分が未成年の少年たちである。事務所の経営陣はそのことを忘れてはいないか。そして、ジャニーズの問題点は、そこにこそあるのではないか。

ジャニーズの本質

 「100人以上いるジャニーズJr.は、ほとんどのコが12、13歳ごろからメジャーデビューを目指している。平日の放課後、休日は歌やダンスのレッスンで埋まっています。それなりに人気が出て、先輩スターのバックダンサーになれるのは、そのうち1、2割。それでも1ステージ数千円程度しかもらえない。ドラマやCMのチョイ役で使ってもらって月10万、20万円と稼げようになるのはほんのひと握りで、最終的にデビューまで漕ぎ着けるのは1、2%です。18歳ぐらいまでに芽が出なければ絶望的で、そのまま脱落してフリーターやホストになるケースも少なくありません」(芸能ライター)

 ジャニーズというブランドに惹かれて事務所に入った少年たちは、いつかのデビューを夢見てレッスンに励む。そして、ある年齢になれば、ジュニアとして、衆目にさらされることとなる。始めはバックダンサーとしてでも、だんだんファンがつくようになり、ジュニア内でユニットを組むようになるかもしれない。さらに人気が高まれば、ドラマに出たり、歌番組に出たりして、最終的にはデビューする。
 という道を辿れるのは、ごく一部に過ぎない。つまり、デビューの裏には、ひそかに消えていった少年たちが多数存在しているわけである。本来ならば、事務所に入った時点で、かなりの確率をもって、デビューまで保証されるべきではないだろうか。つまり、採用したタレント候補たちをデビューできるまで育て上げるのが芸能プロダクションの仕事であり、使命であろう。にもかかわらず、ジャニーズは、タレントを育成するのではなく、青田買い的に、とりあえず良さそうな人材を確保しておいた上で、最終的に人気が高いもの達だけを引っ張りあげて、残りは不良在庫として適当に処理してしまっている。
 実際、いつになってもジュニアから抜け出せないアイドルたちがいる。彼らは、それでも一生懸命にがんばっている。しかし、そのような忍耐力がない少年、あるいは理想とのギャップに苦しむ少年たちは、少しづつ道を外しはじめる。もし、彼らが、ジャニーズ事務所の面接で落とされていたらどうだろうか。その時は悔しい思いをしたとしても、きっと違う未来を目指して、生きていったのではないか。ジャニーズに入ったことで、周囲からもてはやされたり、ファンからプレゼントをもらったりする生活を経験してしまった少年が、平凡な生活に満足できるとは思えない(もちろん、その人それぞれではあるので、一概にはいえないが)。夢が絶たれたときに、今までの生活を求めて、犯罪に走ってしまうことなど容易に想像がつくのではないだろうか。少年たちの心の内などを微塵も考慮せず、ただ大人たちの儲けの道具として利用しているというのが、ジャニーズの本質であるように思えてならないのだ。

ジャニーズの今後

 今回の件を受けて、ジャニーズがその方針を転換するとは思えないし、責任を感じているのかさえも疑問だ。事務所のイメージを落とさないためのマスコミ戦略しか頭にないのではないかと思ってしまう。KAT-TUNという、人気グループのデビューが控えている今、こんな事件を起こしてしまった二人の少年をうらむことはあっても、彼らに謝罪したり、彼らを守ったりするつもりなど毛頭ないだろう。