第10話「聖地」

 このドラマは何を描きたいのだろうか。原作のコミックを読んでいないので、よく分からないが、ドラマ化するからには、なにかしら見せたいポイントがあるのだろうと思う。だが、終盤になった今でもよく分からない。
 主人公のユウ(石垣佑磨)の成長を通して、マサキ(徳山秀典)がもっている哲学を視聴者に伝えようとしているのだろうか。ユウは肉体的、技術的には成長したが、精神的には不安定で未熟だ。よく考えればこれほど恐ろしい状態はない。
 現に、ユウは完全に「ヤンキー狩り」と化し、手当たり次第に暴力を振りかざしている。親友のシン(青山草太)とショウゴ(鈴木信二)が理由なき暴力を受けたことが直接のきっかけとなっているわけだが、ユウ自身の暴力がすでに理由不在のものであることに気付いていない。自分の暴力が原因で、自分と同じ感情を抱く多数の人間がいることをとらえられていないのである。
 一方のマサキは強靭な肉体と技術、そして精神を兼ね備えているように見える。自分が戦うことは極力避けつつ、夜の街の抑止力として存在意義を保っている。そのマサキとの交流によって、ユウは元の自分を取り戻すことができるのだろうか。
 というのが、このドラマで見せたい部分なのだろうか。これを除けば、ただのアクションシーンを中心としたアイドルドラマにしか見えないのだが……。そうでもないのだろうか?
 ところで、今回、ショウゴの台詞の中に「旧の木阿弥(元の木阿弥)」という言葉があったが、不良に似つかわしくない言葉で、なんだか面白かった。