第9話「能登・死の旅へ」

 杏梨(牧瀬里穂)はもう止まらないのか。もう誰にも止められないのか。裕福な家庭で育ち、何不自由なく幸福に生きてきたであろう杏梨。彼女が初めて失ったものは夫の耕平(加藤浩次)であった。その初めての喪失は、杏梨を極限までねじ曲げてしまった。そこに生まれた狂気は弘子(森口瑤子)や典子(松原智恵子)のものとは比べ物にならないほど強大で恐ろしい。
 杏梨の暴走が始まった今、千夏(飯島直子)はおろか、弘子や耕平、光哉(田中圭)までもが巻き込まれかねない。次話以降、登場人物たちは次々と崩落していくのだろう。汚れた舌たちによってもたらされた悲劇は、どこに行き着くのであろうか。
 ただ、物語の面白さとしては、前半の方が良かったと思う。前半は、それぞれの思惑が絶妙に絡み合って起こされる展開が、驚きとスリルに満ちていた。その結果としての現在の話は、杏梨一人の暴走劇のようになってしまっている。もちろん、そのような結果になったことが面白いのだし、杏梨の度が過ぎた狂気の演出も面白いのだが、やはり前半の方が魅力的だったように思ってしまう。