第9話

 交通事故に遭った一ノ瀬努(松尾敏伸)は、手術の甲斐もなく亡くなった。こずえ(上戸彩)やみどり(酒井彩名)にとって、いままでで最高に辛く、悲しい出来事であったはずなのだが、どうしてあんなにあっさりとした描写だったのだろうか。
 確かに、決勝戦直前ではあったが、いままでに描かれてきたこずえの性格から考えるに、あんなに簡単に乗り切れるとは思えない。天国の努に見せるために戦うという気持ちだったのだし、こずえも精神的に強くなったのだろうが、それにしても簡潔すぎるのではないかと思う。
 察するに、このドラマにおける努の存在意義というのは、こずえに対するみどりの感情を荒げることや、バレーボールから離れそうになったこずえをひきとめることにあったのだろう。このドラマで描きたいのは、あくまでバレーボールを通してのこずえの成長であり、恋愛などではないのだ。
 再度全日本高校選抜に召集されたこずえたちの前に現れたのは、本郷俊介(中村俊介)であった。監督である猪野熊大吾(船越英一郎)の補佐として起用された彼は、富士見学院バレー部のコーチとしてではなく、全日本選抜のコーチとして登場した。彼は、猪野熊側の人間であり、こずえたちの敵ともいえる存在である。そして彼は、猪野熊同様の鬼コーチでもあった。以前以上に波乱に満ちた、厳しい合宿となることだろう。