第9話「イチかバチか」

 このドラマは前回で終わった。というのが正直な感想。前回の感想にも書いたが、あれで終わりにしておけば良かったと思う。
 今回の展開の無さは、飽きずにはいられないという感じであった。もちろん、全く展開が無いわけではなく、刀根明(広田亮平)が風の丘ホームに戻ってきて、朋美(小雪)をはじめとした元職員達までも集まったし、次郎(木村拓哉)はレーサー生命の危機を乗り越え、レーサーとしての復活に向けて前進した。
 だが、そんな話はどうでも良い。今までは、各回にそれなりに大きな出来事が起こり、次郎の破壊力により解決したり、子供と分かりあえたりするという流れがあった。それが面白いかは別として、一応のヤマが作られていたと思う。しかし、今回の話はどう考えても最終回へのつなぎであって、平坦なまま終わってしまった。喫茶店で保育士の鳥居元一郎(堺雅人)がパフェを食べていたのが、唯一面白かったぐらいだ。
 次郎がレーサーに復帰するとかしないとか、そんなことは物語を進める上のサブ要素であって、中心要素とは思えない。今までも、その話題は何度も出てきているが、それは単独で意味を持つものではなく、あくまでも子供たちや園長(原田芳雄)たち家族、あるいは保育士達との関係を描くために用いられた補助的な要素であった。つまり、レーサーへの復帰を目指す男という肩書きでしかなかったのである。
 それが、今回中心に据えられたことで、ドラマのリズムを崩したように思う。このドラマの魅力、というよりもキムタクドラマの魅力(とりあえず、魅力があるものとして考えると)は、キムタクの破天荒さにこそあると思う。やりたい放題のキムタクが描かれていてこそ楽しめる。このドラマでは、キムタクのめちゃくちゃ加減が、それなりに良かったので、予想よりも好評価だったのだが、ここにきて失速してしまったようで残念だ。
 行儀の悪いキムタクが面白いのに、このドラマも結局はお行儀の良い終わり方をしてしまいそうである。視聴者の多くがそういう結末を求めているのかもしれないが、無難なところに落ち着けるのは、いい加減やめてほしいと思ってしまう。