『幕末』司馬遼太郎

幕末

幕末

司馬遼太郎
文春文庫 (2001/09/10)
\700(税込)
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(勝手に10段階評価。4が標準、10が最高)

 小説はミステリ以外ほとんど読まないし、歴史があまり好きではないので、歴史小説は全くと言って良いぐらいに読んでいない。歴史ミステリや捕物帳は多少読むが。
 だが、意外と読みやすかった。暗殺事件を扱った、12作収録の連作短篇集というのも良かったかもしれない。長篇だったら途中で挫折しただろう。
 個人的には、「逃げの小五郎」が面白かった。史実に忠実に書かれているのだと思うが、学校で習った「偉い」人物にもいろいろな側面があるのだということが分かる。桂小五郎はこういう人物だったのか。他の作品にも、様々な人物の意外な面が描かれていて楽しい。きっと、歴史に詳しい人にとってはもっと楽しいのだろう。
 また、幕末という時代の転換期の人々の行動自体も興味深い。特に、新政府誕生によって、価値観が180度変わるところなどは、いわゆるパラダイムの転換というのは、こういうことなのだろうなぁという感じがした。これほど大きな転換期というのはなかなかないだろうから、小説として描くには魅力的な時代なのかもしれない。
 だが、この作品は、あとがきで作者が言っているように、「小説風」に書かれた司馬遼太郎の語りなのである。だから、作中で司馬遼太郎が時々顔を出しては補足の説明をしたり、文献を引用したりする。メタミステリなどで、作者が出てきてしまうのとは違い、なんだか勉強させられている気分になる。読み慣れていないから違和感があるのかもしれないが、歴史小説というのは、こう言う書き方のものが多いのだろうか。
 自発的に歴史小説を読むことなどないだろうから、紹介してくれた友人に感謝。でも、やっぱりミステリの方が良いな。