第9話「え!?不倫弁護士」

 リコベン(「離婚弁護士」をこう略すらしい)は、かくあるべきだ。久々にリコベンらしい、痛快で面白い物語だった。
 IIになってから、前作の魅力であった勧善懲悪的な痛快さ、爽快さが失われて、輝きを失っていた。しかし、第9話まできて、やっと元の魅力を取り戻してくれた。悪徳エステ業者を打ち負かした時の心地よさは、第8話までは感じられなかった。
 その原因は、まず佐伯弁護士(瀬戸朝香)にあるだろう。彼女と間宮貴子(天海祐希)との間の無用な対立構造は第8話において解消された。そして、第9話で佐伯は休暇を取っており、ほとんど登場していない。つまり、佐伯という新メンバーは不要だったのである。彼女がいなかったことで、第9話は前作と同じレベルに戻ったのだから。
 以前も書いたが、このドラマは、前作から変更された(新しく加わった)部分がことごとく失敗している。佐伯しかり、小向つや子(戸田恵子)しかり、そして、三神達也(宇梶剛士)しかり。その三神と貴子の恋愛に関する描写も、第9話ではそれなりに意味を持っていた。とはいえ、三角関係などはどうでも良い。だが、三神が結婚していたという事実と貴子へ送られてきた内容証明。このことによって、初めて三神が存在意義を持ったと言えるだろう。
 前作の基本的な構造は、法律を(ある程度)知っている敵と戦い、一度は敗れるが、その後、妙案を思いつき、一転して敵を追い詰める、というものであった。準備万端な敵を小さな盲点から突き崩した時の爽快さが魅力だったのだ。偶然に頼ることも多いが、それは盛り上げるためであって、違和感を感じることもなかった。
 ドラマに限らず、小説などでもシリーズものの場合、パターン化された展開が繰り返されるというのはよくある。しかし、それも長く続くと飽きてしまうことがある。実際には、同じパターンの繰り返しでも、毎回の物語が魅力的であれば、決して飽きることはないのだが、それもなかなか難しい。だから、それまでのパターンを崩すことで、新鮮さを演出する。パターン化によって先を予想していた視聴者・読者は、異なった展開に驚きを感じるのである。しかし、その新鮮な展開が魅力的でなかった場合には、失望を感じ、以前の方が良かったと批判する。「離婚弁護士II」はまさにそのような感じだと思う。だが、ここにきてなんとか原点回帰をしたことで、とりあえず救われた。
 それにしても、最終回直前でやっと面白くなるドラマというのも珍しい。回を重ねるごとに飽きてくるドラマが多い中、このドラマは意図的に前半をつまらなくしていたのだろうか。それはないと思うが、今回のように面白い話を作れるのだから、もっと早くから面白くしてほしかった。
 次回は、追い詰められた貴子を、佐伯たち事務所のメンバーが一丸となって助けるのだろう。その中で、つや子と亜紀(片瀬那奈)が活躍するのだろうか。もし活躍しないとしたら、この二人(特につや子)は全く不要な人物だったとしか思えない。