最終話「いとおしい舌」

 内館牧子らしい、晴れやかな結末だった。
 あれだけドロドロとした愛憎劇の末に、こんなに心地よい結末をもたらすことができるのはすごい。多少の強引さはあるが、作中での違和感は感じられなかった。
 振り返って見れば、失ったものはたくさんあるように見えるが、実際には千夏(飯島直子)の母、典子(松原智恵子)の死だけであった。あとのものは、喪失ではなく、それぞれの前進を阻んでいた足枷を取り除いただけなのである。
 その足枷がなくなった今、それぞれがそれぞれの道を歩みはじめ、前進した。弘子(森口瑤子)は杏梨(牧瀬里穂)と和解し、共に富士山花店を経営することになった。耕平(加藤浩次)は杏梨と離婚し、千夏とも別れ、一から花屋をはじめた。光哉(田中圭)は自分の夢のために、大学受験を決意し、旅立った。白川(藤竜也)は千夏の父の作品を観ることで、創作の意欲を取り戻し、他人の評価ではなく、自分の目指す作品を創りはじめた。そして、千夏は再度店舗を持つことを夢見ながら、移動販売の花屋をはじめた。
 ひとこと言うならば、白川だけまとも過ぎる。一人だけ、すごく良い人だった。なんか裏があるのかと思ったのだが、ぶれない軸を持った、カッコいい大人の男という、このドラマには場違いな感じで終わってしまった。一人ぐらい、こういう人がいないと、とっちらかったまま収拾つかなくなるのだろうけど。とにかく、まともすぎて不思議。
 単なる愛憎劇で終わらず、最終的にはハッピーエンドといえる結末で、良いドラマだった。怒涛の展開の末にすっきりとした気持ちをもたらしてくれるという、期待通りの良作だったと思う。