WaT(ウエンツ瑛士&小池徹平)、11月上旬にメジャーデビュー

 泣く子も黙る大事務所バーニングプロダクション所属のWaTがメジャーデビューすることになった。いろいろと気になる部分もあるので、細かく見ていこうと思う。

 バラエティーやドラマでそれぞれ活動するウエンツ瑛士(19)と小池徹平(19)のシンガー・ソングライター・デュオ「WaT(ワット)」が11月上旬にメジャーデビューすることが8日、発表された。グループが人気となりいわゆる“バラ売り”で活動するのが一般的な芸能界で、バラ売りからグループがメジャーデビューするのは極めてまれ。

 同デュオは平成14年4月に結成。路上ライブや学園祭ツアーを行い、昨年2月に「卒業TIME」でインディーズ・デビュー。メキメキ付けてきた人気と実力に、レコード会社が注目し、11社の争奪戦の末、ユニバーサルミュージックに決定した。デビュー盤はシングル曲で、タイトルは未定。

 音楽と並行して個別の芸能活動も力を入れてきた。ウエンツはフジテレビ系「脳内エステ IQサプリ」(土曜後7・0)などバラエティー中心に活躍し、20代以上の女性に人気。10代女性に人気の小池はTBS系「ドラゴン桜」(金曜後10・0)などドラマ中心に活動し、先月の東京・銀座の福家書店の写真集発売記念イベントには3500人が集まり同店の動員新記録を樹立。「2人合わせて幅広い人気が期待できる」(ユ社)。

 この日、2人はHP上でファンに報告。「やっと一つの夢がかないました。心に届く歌を2人で力を合わせて歌っていきたい」(ウエンツ)、「10代最後の素直な気持ちを詞と曲に込めて皆さんに伝えたい。がんばるぞ」(小池)。来年3月上旬にも初アルバムを発売し、東名阪ツアーを予定。デビュー後も“ワッと”花を咲かせる。

WaTとは?

 上の記事にもあるように、ウエンツ瑛士小池徹平によるユニットである。「WaT(ワット)」という名前の由来は「WENTZ and TEPPEI(ウエンツ アンド テッペイ)」という単純明快なものだ。
 1985年生まれのウエンツは、ドイツ系アメリカ人の父と日本人の母を持つハーフだが、英語を喋れない。その端正な顔立ちゆえ、4歳の時からモデルとして活躍し、劇団四季の「美女と野獣」で役者デビュー。子役時代にはNHK教育の「天才てれびくん」に5年間レギュラー出演し、知名度を上げた。役者としての活動よりも、顔に似合わぬ芸人根性がうけ、バラエティ番組での活躍が目立っている。
 一方の小池は1986年生まれで、2001年に第14代JUNONスーパーボーイコンテスト・グランプリを獲得し、デビュー。翌2002年にドラマ「天体観測」(フジ系)amazon.co.jpでチェックで俳優デビューの後、次々とドラマに出演。特に最近の学園ドラマには必ずといって良いほど出演しており、人気の高さがうかがえる。
 そんな二人がユニットを組んだのは2002年のこと。すでにそれなりに認知され、人気もあった二人だが、メジャーデビューするのではなく、代々木公園でのストリートライブから活動をはじめた。それぞれが制作したオリジナル曲を中心にライブを行い、各地の学園祭にも出演。2003年に観客の増加に伴いストリートライブを終了し、2004年に念願のCDデビューを果たす。そのシングルCD『卒業TIME』amazon.co.jpでチェックはインディーズレーベル(バーニングの自社レーベル)からの発売であったが、発売記念イベントには多数のファンが訪れ、大成功だったようだ。

バーニングの救世主となるか?

 さて、表層的な内容をまとめてみたが、それで終わってしまってはつまらない。なんといってもバーニング所属であるから、そこに触れないわけにはいかないだろう。
 その株式会社バーニングプロダクションは、1970年に設立された国際興行プロダクションが71年に社名変更したものである。代表取締役社長は周防郁雄。「芸能界のドン」とも呼ばれる実力者だ。
 一般的な知名度は高くないし、所属タレントも16名(2005年7月現在)と決して多くない。従業員も20名程度であり、その規模だけを見れば、中小企業と言えよう。しかし、バーニングは日本最大手の芸能プロダクションとされ、日本の芸能界において、一番力を持ったプロダクションと言われている。
 それは、傘下に多数のプロダクションを抱えているからであり、傘下のタレントを数え上げればきりがないだろう。そこまで成長した要因には、版権ビジネスにいち早く目をつけたことが挙げられる。また、周防社長は元代議士浜田幸一の運転手をしていたこともあり、その頃に形成された人脈がバーニングの隆盛をもたらしたと予想される。現在は亀井静香と協力関係にあると言われるが、真偽のほどは定かではない。
 このように、大変力のあるバーニングであるが、近年、その威光にも翳りが見え始めている。2度の銃撃事件や多額の申告漏れによるイメージの低下。細川たかしの移籍、中山美穂の結婚、郷ひろみの休業などが相次ぎ、小柳ゆき島谷ひとみのプロモーションにも失敗し、藤原紀香にもかつての勢いは見られない。
 また、ケイダッシュスターダストプロモーションなどが力を持ってきたこともバーニングの凋落に影響を及ぼしているだろう。同時に暴力団への上納金や投資の失敗、銀行からの融資の打ち切りなど、金銭的な問題も取り沙汰されている。
 あまりいろいろと書いても仕方ないので、このぐらいにしておくが、このような状況のなかでのメジャーデビューだけに、事務所の期待もひとしおだろう。
 だが、WaTがどの程度の売り上げをもたらすかは未知数である。確かに、個々での人気はあるが、ジャニーズ事務所のように熱狂的なファンがどれほどいるかは分からないし、プロモーションの面での不安もある。

ジャニーズ事務所との関係はどうなる?

 WaTのプロモーションの成功にはジャニーズ事務所との良好な関係が不可欠であろう。バーニングの力を持ってすれば、ジャニーズ事務所といえども逆らえない。というのは過去の話であって、現在はそうとも言い切れない。
 ジャニーズの男性アイドル歌手への圧力は、ライジングプロダクション(現ヴィジョンファクトリー)所属タレントの境遇を見れば明らかである。DA PUMPw-inds.、FLAME、Leadらの男性アイドルグループをテレビで見かけることは稀だ。ミュージックステーションへの出演は絶対にありえないし、ジャニーズタレントとの共演も考えられない。それだけではなく、各局は数字の取れるタレントの宝庫であるジャニーズに配慮し、ジャニーズに対抗するタレントの出演を渋っている。それは出版社でも同様で、多数発行されているアイドル誌の中でも、ライジングのタレントが姿を見せるのは、ジャニーズと決別した主婦と生活社による『JUNON』ぐらいである。
 そのライジングプロダクションの後ろ盾はバーニングの周防社長だ。ライジング社長の平哲夫法人税法違反で逮捕された後、ライジングへのバーニングの影響力は強まったと考えられるが、それでもジャニーズの圧力にほとんど変化は見られない(多少弱まった感じはあるが、それがバーニングの力によるものかは分からない)。
 バーニングとジャニーズといえば、郷ひろみ移籍の一件で最悪の関係になったものの、その後歩み寄りをみせ、対立関係にはなかったようである。しかし、今回のWaTのデビューにより、その関係に亀裂が走る可能性もある。方や崩壊説まで飛び交うバーニングと今だ勢いの衰えないジャニーズが対立するとなれば、後者に軍配があがる可能性が高い。
 ところで、ジャニーズは男性アイドル歌手には厳しいが、イケメン若手俳優には圧力をかけていない(というよりも、現実的に不可能だろう)。だから、JUNONスーパーボーイコンテスト出身の北村悠(FLAME)へは圧力をかけているが、同じくJUNONスーパーボーイコンテスト出身の小池徹平には圧力をかけていない。それは、北村が『JUNON』以外のアイドル誌に出ないのに対して、小池はジャニーズ一色のアイドル誌(『Myojo』『Duet』『ポポロ』『Wink up』『POTATO』など)にも普通に登場しているところからも分かる。それに、小池は「ごくせん」でKAT-TUN赤西仁亀梨和也、「ドラゴン桜」でNEWSの山下智久と共演している。
 このように、歌手デビューしていない状況ではジャニーズの圧力は受けていない。しかし、これがメジャーデビューするとなると、どうなるか分からない。私はWaTがメジャーデビューしないのは、ジャニーズに気を遣ってなのかと思っていたので、今回の発表は意外だった。事務所間でなんらかのやりとりはあったのだろうか。もし、メジャーデビューにより、ジャニーズの圧力がかけられるとなると、CDの売り上げに影響するどころか、二人の個人的な活動にまで支障が出てくるだろう。バラエティシフトのウエンツはまだしも、ドラマに重心を置いている小池は、場合によっては出演し難くなるかもしれない。そして、『JUNON』でしかその姿を見ることができなくなるかもしれない。
 そうなれば、バーニングの救世主どころか、また一つマイナス要因を増やすてしまうことになるだろう。ジャニーズの次世代を担う注目株だけに、慎重に扱ってほしいものだが、とりあえずは11月のデビューを待つしかない。ミュージックステーションに出演したならば、最悪の事態は回避できたということだろう。

追記

 書き終わってふと思ったのだが、『Wink up』の発行元であるワニブックスはバーニングの傘下である。傘下といってもどの程度までバーニングが関与しているかは分からないが、少なくとも自社のタレントを扱わせることは容易だろう。では、なぜライジングのタレントを登場させないのだろうか。ジャニーズへの気遣いか。だとすると、両社の関係は予想以上に良好であるのかもしれない。ライジングはあくまでも傘下であるから、ジャニーズとの関係を壊してまで売り出そうとは考えていないということならば、逆にジャニーズとの関係を保ったままWaTを売り出すことも可能なのだろう。そう考えると非ジャニーズの男性アイドルであるWaTが大々的にプロモーション活動を行う可能性は高い。しかも、ジャニーズと友好的に共演するとなれば、ジャニーズ寡占市場に新しい風をもたらすことになるだろう。なんだか、デビューが待ち遠しくなってきた。