『パンプル・ムース氏の秘密任務』マイケル・ボンド

(勝手に10段階評価。4が標準、10が最高)

 『くまのパディントン』の作者マイケル・ボンドによる、大人向けスラップスティックミステリーの第二弾。
 元刑事、今はグルメガイドブックの覆面調査員であるパンプルムース氏は、元警察犬で、とってもグルメな愛犬、ポムフリットと共に秘密任務を遂行する。その秘密任務とは、編集長の叔母さんが経営するゼロ星ホテル・レストランを立て直すこと。でも、このお店、なんだかすごい秘密があるようで……。
 推理小説ではあるが、いわゆる謎解き小説ではないし、本格ミステリとは程遠い。ユーモアミステリと呼ぶのが適当だろう。しかし、作中に溢れるユーモアは並大抵のものではない。端から端まで笑いに満ちていて、決して電車で読んではいけない作品だ。その笑いも、一過性のものではなく、後まで尾を引くものなので、油断していると、周りから白い目で見られる可能性がある。そのぐらい愉快な作品なのだ。
 それにしても、次から次に珍妙な事件が起こるのは、どうも、主人公とその愛犬のせいらしい。彼らが活躍するたびに、事件がどんどん拡大していくのである。なんとも主人公にふさわしい二人ではないか。そんな二人が繰り広げる珍事は、閑静な村を揺り動かし、大変な大事へと発展する。どう考えても収拾のつきそうにない状況をきれいに解決するのは見事だが、もとはと言えば、自分たちが原因になっている部分も多く、引っ掻き回して去ってゆくという感じである。
 今回は媚薬がらみの事件とあって、前作以上に艶っぽい。その艶っぽさは、決して嫌らしくなくて、とにかく可笑しいのである。凄惨な事件をテーマにしたミステリで頭も心も疲れた後はこのシリーズで気分転換をしてほしい。しかし、読みはじめたら、気分転換どころか、全作一気に読みたくなってしまいそうなのが困ったところだ。