『悪文―裏返し文章読本』中村明

(勝手に10段階評価。4が標準、10が最高)

 作家の文体研究や文章表現研究などで著名な著者による文章読本
 「裏返し文章読本」という副題の通り、悪文にスポットを当てているところが面白い。良い文章を書くために、良い文章を読むことは重要だが、同時に、悪文を知ることも必要だ。悪文とはどのようなもので、なぜ悪文になってしまうのかを理解していれば、自ずと良文・名文を書くことができる。また、悪文を見過ごしてしまう確率も減るだろう。
 その悪文について、様々な観点から説明されており、大変分かりやすい。だが、指導書というよりは読み物的な性質が強いので、実際に文章を書いていてどう直したら良いか分からない時に調べるというような使い方には向かないと思う。読み物として楽しみながら読むことで、文章を書く時の態度や注意点を身に付けられる本なのである。
 昨今、ブログが急激に普及し、誰もが文章を書き、それを発表できるようになった。そのような状況の中で、気軽に読めて、かつ実践的であり、なによりも「書く」ことに対する意識改革にも役立つ本書は、恰好の文章読本と言えるだろう。