『小説 名探偵コナン[甲州埋蔵金伝説]』谷豊

(勝手に10段階評価。4が標準、10が最高)

 コナンと少年探偵団のメンバーたちは阿笠博士と一緒に、夏休みのキャンプを楽しんだ。だが、その帰り道、道に迷ってしまう。その上、博士愛用のビートルはガス欠に。途方にくれた彼らは偶然通りかかった車に乗せてもらい、とある温泉旅館へとたどり着く。そこで、武田信玄埋蔵金をめぐる事件に巻き込まれていくのだった。
 著者は売れっ子漫画家の青山剛昌率いる「剛昌プロダクション」のアシスタントを務めている人物。小説を書くのは本作が初めてということだが、初めてとは思えないくらいにこなれた文章で、すっきりと読むことができる。
 『名探偵コナン』シリーズといえば、大ベストセラーであり、キャラクターたちの特徴は漫画などですでに形作られている。それゆえ、ストーリーや構成に集中できるという利点があるのかもしれない。本作では、キャラクターたちの個性を存分に生かすことで、とても魅力的な物語を構成している。
 物語の中心は、武田信玄埋蔵金をめぐる謎。秘宝のありかを示した暗号は解読できるのか。そして、謎の二人組みに誘拐されてしまった歩美と哀を救うことはできるのか。暗号もそれなりにしっかりと作られているが、それ以上に、サスペンスに満ちた展開が楽しい。読みやすさとあいまって、一気に読んでしまうこと請け合いの佳作である。