第8話「母の葬式…」

 このドラマは、毎回大きな展開があるが、今回はあまりに衝撃的かつ悲劇的であった。千夏(飯島直子)の母、典子(松原智恵子)の急逝である。涼野光哉(田中圭)以外の主要キャスト勢ぞろいのバーで繰り広げられた、静かなる舌戦の直後の出来事であり、白川(藤竜也)や弘子(森口瑤子)が驚いたように、視聴者もかなりの衝撃を受けたはずだ。
 典子の死が与えた影響はとても大きい。まず、千夏と白川の関係が耕平(加藤浩次)たちに露見した。そして千夏は、死の原因となった自分の汚れた舌を徹底的に攻め、自殺さえしかねない。また弘子は、白川が千夏の父の盗作騒動の際に言った「そんなこと言っちゃ悪いです」という言葉を、杏梨(牧瀬里穂)の言葉に重ね、典子に深い共感を感じていた。白川が軽く放った言葉は凶器へ変貌し、典子を突き刺した結果、本物のナイフを持った典子に刺し返されたのであった。
 その白川は、典子の死によって、より大きな傷を背負ったまま生きていかなくてはいけない。だが、典子の遺体にそう告げた白川の舌もまた汚れているとすれば、千夏をなぐさめる、いかにも優しい言葉の裏には、典子の死を喜び、あざ笑う感情が潜んでいるのかもしれない。
 本作の中心人物のなかで、比較的裏がなさそうなのが涼野光哉であるが、弘子にも杏梨にも耕平にも、誰にも自分が味方であると告げてしまう汚れた舌を持っている。その舌は、善意のもとに動いているのかと思っていたが、杏梨から十万円という報酬を得た際の様子を見ると、必ずしもそうとはいえないようだ。相手が、自分に好意を抱くように振舞うのは、そこから利益を得るための周到な準備なのだろうか。