『月眠ル地ノ反逆者タチ』神坂一

(勝手に10段階評価。4が標準、10が最高)

 クロスカディアシリーズ第5巻。メイは自分の記憶を奪い、両親を封じ込めた「神々」に会うため、シンたちと共に「月」へ行く。そこで待ち受けていたのは……。
 シリーズの終わりが近づいてきて、ギャグが少なくなってきた。メイの記憶も少しづつ戻ってきて、「悪人」っぷりも薄らいでしまった。それでも、それなりに面白い。ただ、読者を惹きつけて放さないというほどの強い力はない。
 今までの5巻はどれも、ゆったりとした状態に敵が来て、それを倒して次に進む、というほとんど同じパターンの繰り返しなので、自然と先が予想できるようになってしまい、悪いことではないが、またかという気持ちになる。スレイヤーズシリーズもそうだが、RPG的な小説というのは、どうしてもこのパターンの繰り返しになるので、他の要素で意外性を持たせる必要があると思う。
 このシリーズの場合、メイを中心とした登場人物や、舞台となるクロスカディアという世界に意外性や魅力があるのだと思うが、それがあまり強くない。また、メイの謎についてもすごく気になるというものではない。ユーモアセンスは抜群で、会話などはとてもうまいのだが、それだけではちょっと厳しい。そういうものと言われればそれまでなのだが、もっとひねりがほしいというのは、望みすぎだろうか。
 あとがきは相変わらず面白い。あとがきのために伏線を作っているのじゃないかと思うほど。最終巻となる、次巻に期待。