グリフターズ 詐欺師たち

原題:The Grifters
監督:スティーブン・フリアーズ
出演: ジョン・キューザックアンジェリカ・ヒューストンアネット・ベニング、ほか
1990年、アメリカ、全109分
1990年、全米批評家協会賞主演女優賞・助演女優賞インディペンデント・スピリット賞作品賞・主演女優賞
2005/06/23、NHK衛星第2「ミッドナイト映画劇場」にて放映

 舞台はロサンゼルス。ロイはバーテンダー相手のケチな詐欺を繰り返し、その母親のリリーは競馬のノミ行為を行い、恋人のマイラは色仕掛けで宝石詐欺を行っていた。ロイとリリーはあまり歳が離れておらず、男女関係にもなりかねない。そんな3人のグリフターズ(詐欺師)による三角関係を軸にしつつ、騙し合いが展開していく。
 詐欺師をテーマにした作品ではあるが、3人の人間関係に重きがおかれていて、地味な印象は拭えない。3人の行う詐欺も、鮮やかな手口とは言えない、地味な詐欺である。詐欺師の三つ巴というから、もっとスリルに満ちた、息もつかせぬコンゲームが見られるのかと思っていたので、個人的には期待はずれだった。
 そもそも、この映画で中心的に描きたかったものが何かがはっきりとしない。華麗な詐欺の手口は登場しないし、かといって、母・息子・恋人の三角関係に魅力があるわけでもない。
 全編を通じて「冷めた視線」が感じられて面白いのだが、それが中心であるとは思えない。それを通して、人間の感情の複雑さやブレ、そして冷淡さを描きたいのだろうか。詐欺師たちを中心に据えていながらも、アッと驚く展開がほとんどないことを考えると、人間関係とか、感情とかというような、人間クサイものを描くために、冷徹な詐欺師を用いたということか。
 作中唯一とも言える、どんでん返しの部分は十分に驚けたし、面白かった。難しいことかもしれないが、こういう展開が次々と起こるともっと良かったと思う。キレイごとに片付けない、救われない結末は個人的には悪くないと思う。過度な期待をしなければ、十分に楽しめる映画である。私の評価は、良くできた凡作という感じだが。