『IN・POCKET 2005年6月号』

(勝手に10段階評価。4が標準、10が最高)

 巻頭特集は高野和明インタビュー。乱歩賞を取った『13階段』は有名な作品だが、未読なので読みたいと思っているものの、なかなか辿り着けない。ちなみに、彼が岡本喜八に師事していたとは知らなかった。
 インタビューの中で、物語の「黄金パターン」を外すにはよほどの勝算がなくてはいけないと語っていたが、まさにその通りだと思う。確かに、黄金パターンに忠実だと、ありきたりに思うこともあるが、だからといって、新奇であれば良いというものではない。人物描写などの細部がしっかりしていて、かつ工夫されていれば、黄金パターンでも十分に新鮮さを感じられる。
 一方、そのパターンを外した場合、よっぽど上手く創られていないと、細部が丁寧でも全体として崩れてしまう可能性がある。メタ志向が強すぎて、結局良く分からない作品になってしまうというのも、この典型だろう。
 今号で、赤川次郎の「観光案内殺人事件」と、逢坂剛の「暗い国境線」が最終回を向かえた(前者はシリーズものなので、すぐに次の話が始まるが)。「観光案内殺人事件」はユーモアミステリなので、この真相でも良いのかもしれないが、飛びぬけたトリックを期待していただけに、少しがっかり(作品としては十分面白かった)。
 「暗い国境線」は続編があるのだろうか。まだまだ続くのだろうと思っていたので、突然の終了に驚いた。一応、当面の問題には片が付いたということなのだろうが、少し唐突な感じもする。