KAT-TUN亀梨和也が3代目金田一少年(2)

 前回の記事(2005/07/14「KAT-TUN亀梨和也が3代目金田一少年(1)」)からだいぶ経ってしまったが、その中では、今回のスペシャルドラマ化についての全体的な紹介記事を引用した上で、『金田一少年の事件簿amazon.co.jpでチェックというコミックがミステリ界にもたらした影響について、簡単にまとめた。今回は、ドラマとしての側面から見ていこう。

 同ドラマは「週刊少年マガジン」(講談社天樹征丸)で93年から連載された原作を、95年4月にスペシャルとして放送。KinKi Kidsの堂本剛(26)が主役を演じ、16・7%の高視聴率を獲得したため、同年7月に連続ドラマ化。翌年も同じキャストで、さらに2001年には、嵐の松本潤(21)が2代目の金田一少年役としてそれぞれ連ドラ&スペシャルドラマ化された。

 上記記事にあるように、ドラマ「金田一少年の事件簿」は何度も実写化されてきた。分かりやすいように時系列でまとめてみよう。

 堂本剛主演のものが、二回連続ドラマとなり、映画化もされていることからも分かるように、金田一一というと、堂本剛という印象が強い。今回始めて、このドラマに触れる世代は別だが、過去の作品を知っている人々の多くが、堂本剛が適役だという意見のようだ。松本潤主演の際も、イメージが違うというような批判的な意見も多く見られた。
 このドラマに限らず、どんなものでも、別キャストで再度映像化される場合、どうしても二代目以降の分が悪い。特に、本作のように、初代のインパクトが大きく、人気の高かった作品の場合はその傾向が強い。
 それを回避するためには、すでに視聴者の頭の中で形作られてしまっている金田一一像とは別種の金田一一を登場させる必要がある。

 堂本と松本が名探偵として成長した金田一を演じたのに対し、3代目の亀梨はこれが初事件。「ジッチャン」こと祖父を嫌い、事件にも逃げ腰。吸血鬼伝説が残る廃虚風のペンションで次々と起こる殺人事件に、推理を間違えながらも最後は「ジッチャンの名にかけて」と奮闘。名探偵として第一歩を踏み出す過程が描かれる。

 今回のドラマ化に当たって、原作やこれまでのシリーズとは違う一に設定したのは、過去の作品と単純比較されるのを避けるためだろう。新しい一にすることで、堂本剛による金田一一の印象を薄めるという意図があるのだと思われる。
 しかし、主人公の設定を変更してしまうと、その設定変更自体に批判が出る可能性もある。原作および過去のドラマにおいて、一は最初から抜群の推理能力を周囲に認められ、自覚もしていた。それが、今回は「次第に自らの推理能力に目覚めていく」らしいから、周囲の眼差しも今までとは違うのだろう。そうなると、剣持警部は一をどのように扱うのだろうか。今までは、彼の推理力を認め、協力をしていたが、普通、警察は一般人の事件への介入を嫌うものである。一の推理力が認められていないとなると、剣持からも邪魔者扱いされるのだろうか。
 そういう細部については、放送を待つばかりだが、新しい設定にしたことで、今までの魅力を損なうような結果にならないことを願いたい。変える部分と生かす部分の見極めをしっかりとやってほしいものだ。

 また、ヒロインの七瀬美雪役に女優の上野樹里(19)、タッグを組む剣持警部役に加藤雅也(42)と、キャスティングも一新。アッと驚く“隠し玉”も登場する予定で、さらにパワーアップした事件簿になりそうだ。

 同時に発表された他のキャストも見てみよう。上野樹里は「エンジン」amazon.co.jpでチェックにも出演していたが、どちらかというと気の強そうな雰囲気なので、頼りない一を強引に引っ張っていく役割なのだろうか。加藤雅也が剣持というのは少し神経質っぽい気もするが、設定如何では適役なのかもしれない。ちなみに、過去のキャストを挙げておくと、美雪役はともさかりえ鈴木杏、剣持役は古尾谷雅人内藤剛志であった。
 記事中で目を惹くのは、「アッと驚く“隠し玉”も登場する予定」という部分である。これだけではなんともいえないが、予想としては、KAT-TUNの他のメンバーの出演か、過去に金田一役を演じた、堂本剛松本潤の出演である。「ごくせん」で亀梨と同級生役を演じた赤西仁が、一と同級生という設定で出演するというのは、ありえそうな気もするし、そういう期待もあるだろう。私も面白いと思う。

★今回の物語

 吸血鬼伝説が残る村の廃墟風ペンション「ルーウィン」。そこで起こる第1の殺人事件。蘇った伝説の怪人は、美雪(上野樹里)の目の前で、宿泊客を絞殺。さらに吸血鬼の牙は美雪にも及ぶ。次々と殺されていく宿泊客。鉄壁のアリバイと密室という「不可能犯罪」…。吸血鬼伝説は、本当に存在するのか。それとも…。

 ストーリーについても見ておこう。原作である『吸血鬼伝説殺人事件』amazon.co.jpでチェックは読んでいないが、この記事を読んだ限りは、本格ミステリ的な要素が盛りだくさんのようだ。因習根深い地域、伝説の存在、人気のない建物、限られた人物の中で起こる連続殺人、アリバイ崩し、密室……。詳細は分からないが、なかなか期待できそうである。
 さて、このシリーズは過去二回とも、スペシャルドラマの後に連続ドラマ化されている。今回も連続ドラマ化への期待が大きいだろうから、それが実現する可能性も高いだろう。
 とはいえ、まずはスペシャルドラマが成功しなくては始まらない。一番の不安要素は、今までとは違う金田一一である。過去の作品の人気が高いだけに、プレッシャーも大きいだろうが、シリーズ最高と思えるぐらいのドラマになってほしい。こういう過度の期待がプレッシャーを助長するだろうが、どうしても期待せずにはいられないのである。