『ママチャリ刑事I』小松江里子

(勝手に10段階評価。4が標準、10が最高)

 バツイチ子持ちの女刑事、立花薫とその隣に住む専業主婦(夫が刑事)の小泉日向子。そんなふたりのママチャリコンビが活躍する短篇ユーモアミステリ。「呪いのゴミ箱!殺人カラス襲撃事件」など、全四話が収録されている。
 小松江里子といえば、人気脚本家の一人である。おそらく本作も、ドラマ作品なのであろう。そう思って、ページをめくると、「ノベライズ/豊田美加」と書かれている。これはどういうことだろう。奥付を見ても、「著者 小松江里子」となっているのだが……。普通、ドラマや映画などのノベライズの場合、ノベライズをした人物の名前は表紙などにも表記されるだろう。にもかかわらず、本書は、物語が始まる前のページに小さく書かれているだけである。本書の著書はノベライズをした豊田美加であって、小松江里子はあくまで原作とか、原案とか、脚本とか、そういう表記が正しいのではないだろうか。なんとなく納得のいかない扱い方である。
 さて、肝心の内容はと言えば、まあ、普通のユーモアミステリと言って良いだろう。全体的に脚本調なのはとりあえず大目に見ることにする。
 しかし、第二話の事件はどうかと思う。公園に落とし穴を掘って、そこに傘の先を上に向けて無数に立てて置き、その場所に相手をおびき出して……。幅二メートル深さ三メートルの穴を誰にも気付かれずにどうやって掘ったのかも疑問だが、それ以上に、そんな大きな穴に誤って落ちる子供がいなかったことに驚嘆する。そもそも、そんな穴をどうやってカモフラージュしたのかも分からないし。それに、そこまで苦労しておいて(おそらくスコップで掘ったのだろう。三メートルも!一晩で?)、凶器が傘とは(しかも17本だけ)、ユーモアミステリにしてもちょっとひどいような気がする。ドラマの場合は大げさにしないといけないのかもしれないが、小説化する際にはもう少し考えてほしい。
 ちなみに、ユーモア部分はしっかり押さえられているので、細かいことを気にしなければ、十分に楽しめる。特に、専業主婦、小泉日向子と鑑識官とのやり取りは非常に面白い。おそらく、ドラマにおいても、見所の一つになっていたことだろう。