第1話

 キャストも脚本も良く、安心して観ていられた。矢島家の三姉妹の遺産相続争いというだけではなく、そこに文乃(米倉涼子)をはじめとする様々な人物の思惑が交錯し、作品のスケールを大きくしている。
 前クールの「汚れた舌」も女性を中心とした争いを描いたドラマであったが、内館作品はどちらかというと、庶民的な家庭を中心に、狭い範囲でのドラマを描く傾向にある。一方、このドラマの原作者である山崎豊子は、社会問題などをテーマに大きなスケールで描くことが多い。
 本作も、一つの富豪の家の中だけに収まらず、矢島商事の社員や梅村流家元の梅村芳三郎(高橋克典)らを巻き込んで、大きなうねりが生まれる予感がある。三姉妹を中心とした矢島家一族対文乃という構図が大枠なのだと思うが、三姉妹が心から団結しているわけではないことを考えると、そう単純なものではないだろう。
 結末で提示された、矢島家当主の嘉蔵(森本レオ)と文乃との間の子供の存在は、遺産相続の点で大きな意味を持つ。文乃自身は純粋な女性であるようだが、子供のこともあるし、周囲の意見によって、考えが変わってくるのかもしれない。それとも、純粋に子供を生むことを希望していくというだけだろうか。彼女の望みがそれだけだとしても、矢島家の人間からみれば絶対に生ませたくないだろうから、対立構造が弱くなるというわけではない。
 まだ第1話を観た限りでは、今後の展開は予想できない。適材適所のキャストも魅力的だし、上品さの仮面をかぶった卑俗な人物たちと、恵まれない境遇ながらも高潔な心を保っている文乃の対立も見所だ。また期待できるドラマの登場で、今期はどれも見逃せない。