Take1「お金がない!?テレビのお仕事始めます!」

 魅力的なドラマが乱立するなかで、おそらく、注目度が低いドラマの一つだろう。それほど期待していなかったが、やはり予想程度の出来で、今後も続けて観るか迷った。とりあえず、もう少し静観してみようと思う。
 たしかに、今期の他のドラマには劣るが、かといって、全く面白くないというほどではない。ただ、主演の深田恭子は、貧乏な少女よりも「富豪刑事」の時のようなお嬢様役が似合う。現段階では、彼女の魅力が感じられないどころか、不思議少女のような雰囲気になってしまっていて、マイナスにさえも思える。今後、もっと魅力的な描き方に変わっていってほしい。
 一方、長谷川純一(谷原章介)はなかなか良い。谷原章介はクールで理知的な役柄の多い、二枚目俳優だが、本作では、見かけ倒しのマヌケな三枚目役なのが面白い。しかも、全く違和感がないから素晴らしい。また、彼の上司である、永井雅子(松下由樹)も適役で良い。やはり、松下由樹は(多少強引な)デキル女がハマリ役だ。観ていて安心できる。
 個人的には、中盤に登場した西園寺翔(岡田浩暉)がどうも好きになれない。ドラマの製作現場を舞台にし、リアリティを感じさせるように作られている中で、ああいう、なんともドラマで描かれやすい典型的なタレントを登場させる意図が理解できない。現実にあんなふざけたタレントは存在しないだろうから、ドラマの全体の雰囲気と相容れず、浮いてしまっていた。個性的なタレントを描こうとしたのかもしれないが、もう少し考えてほしい。
 ドラマのストーリー自体は、それほど悪くないと思う。借金取りが悠長過ぎるきらいもあるが、テレビ局の中で、浅田ひかりがどういう役割を持つようになるのかが楽しみだ。ただ、現段階では、彼女が主役とは思えない。主役は長谷川か永井なのではないか。
 ところで、作中、永井のドラマが低視聴率であることを受けて、制作局長・熊野雄太郎(津川雅彦)が、ドラマは「いい男といい女が出て、泣けて笑えてハラハラドキドキするものがいいんだよ。」と言っていた。それとは反対に、芸術性の高いドラマを作ろうとしているのが、永井である。だが、そんな彼女のドラマのタイトルが「愛の扉 恋の罰」とはお粗末だ。陳腐な上に、よく分からない。もう少し詩的なタイトルにすべきではなかっただろうか。
 あの熊野の言葉は、特にフジの月9を意識していたように思う。月9というのはそういうものだ。このドラマが、月9的なドラマへのアンチテーゼであるなら、今後が楽しみなのだが、初回を観た限りでは、そういう意志は感じられない。結局「いい男といい女が出て、泣けて笑えてハラハラドキドキするものがいい」ということなのだろうか。